さて、みなさんはイビザという革をご存じだろうか。
光沢強めなシンプルな革を探していてこの革を選んだのだが、
とんだじゃじゃ馬だったので、ご紹介。
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【イビザとは】
イタリアのタンナー、テンペスティ(TEMPESTI)社から届いたシングルバット判。
プルアップ仕上げによりしなやかで鮮やかな深みのあるカラーに
色の濃淡がプラスされた味わい深い革です。
※シングルバットとは牛の背中からお尻にかけてとれる部位のことです。
【店長の一言?メモ】
触った瞬間に感じる浸み込んだ大量のオイル。
しっとりとした質感と銀面のやさしくも艶やかな光沢が
わかりやすく高級レザーであることを伝えてくれます。
革を折り曲げると折り曲げた部分の色が変わる
プルアップという現象がかなりはっきりと現われます。
また、完全な芯通し染ではなく、カットした断面に
革本来の生成色が見えます。
過激なほどのプルアップは曲げるだけではなく
刻印を打つ、菱目打ちを打つ、ヘリを落とすなど、
通常の作成工程でも簡単に起こり、作品が完成するころには
購入当初のスムースで上品な表情からは
想像もできない複雑で味わい深い世界に1つだけの作品が
生まれていることでしょう。
硬さ:やわらかめ
厚さ:約2㎜
サイズ:約100DS
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【特徴1:尋常じゃないプルアップ】
革をなめした後、オイルを追加で浸み込ませ耐久性や耐水性、柔らかさなどをアップさせた
革をオイルレザーという。
オイルレザーの特徴の一つに曲げるなど、
圧力を加えた部分のオイルが移動し、色が変わるプルアップという現象がある。
このイビザ、含有オイル量がよくあるオイルレザーの1.5~2倍
浸み込ませてあるらしく、プルアップがとんでもない色の変化として現れる。
刻印を押す、ヘリ落としでヘリを落とす、菱目打ちで穴をあける。
普段やっている作業工程を普通にこなしているだけで
色がどんどん変わっていく。
シンプルな焦茶色だった革が手を加えたところから
どんどん複雑で味わい深いグラデーションへと変化していく。
なんと楽しい革だろうか。
作っているだけ、触っているだけで楽しい、
というのは、クラフト用素材として最高だと思う。
【特徴2:実は芯通しじゃない】
画像をよく見ていただくとわかるが、
この革表面を見るだけではわからない特徴がある。
中が染まっていないのだ。
※カラーによる違いや個体差もあるらしい
革の染色には大きく分けて2種類
芯通し(中までしっかり)と丘染め(表面だけ)がある。
(これはどちらが悪いということではなく、革の多彩な表現の一つとして考えてほしい)
この革、ぱっと見は銀面もトコ面も同色に染まっている。
芯通しだ!と思って買ってみたらなんとなんと。
中は地の色、ヌメの色が残っているではないか。
これのおかげで積層のようなコバが現れる。
しかもパキっとはっきりした層になっているわけではないので、
染料が強く出る部分、ヌメが強く出る部分がゆらゆらと
揺らぎ、まるでファイヤーオパールのような輝きを放つのだ。
【特徴3:圧倒的なオイル含有量】
先述したとおり、このイビザには通常の1.5倍のオイルが含まれている。
そのオイル量が面白い逆転現象を引き起こした。
画像は左が刻印を押した直後、右が数時間後の写真である。
なんと色が濃く戻ってきている。
これは仮説だが、
溢れんばかりのオイルが一度押し出された後
元の場所へと戻ってきているのではないだろうか。
ただ、ワイルドなだけではなく、気品、上品さを失わない革である。
にしても、短時間でここまで表情が変化していく革は初めて見た。
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いかがだっただろうか。
私も手に入れたばかりで、
この革を完全に理解したとは言い難い。
いろいろ作品を作ってみながら、この革の奥深さ、美しさを
理解し、伝えられればと思う。
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